被覆栽培とは新芽の育成中に茶樹に覆いをかけ、一定期間日光を遮って栽培する方法のこと。高品質な茶葉を作る際に多く行われる栽培方法です。
茶業界用語では「被せ」とも呼ばれる手法です。
栽培期間
玉露や碾茶(抹茶の原料茶)
20日間前後の被覆栽培、もしくはそれ以上の期間行う
かぶせ茶
10日前後の被覆栽培(上記より短い期間)
被覆栽培を行う目的
被覆栽培を行う一番の目的は、お茶の「旨味」を増すことにあります。
以下で詳しく説明していきます。
濃厚な旨味
露天栽培のお茶に比べ、渋味・苦味が軽くなり甘みを感じやすくなります。
お茶の主な旨味成分である「テアニン」は、日光に当たることで渋味成分である「カテキン」に変化するという性質を持っています。
被覆栽培では日光を遮って栽培することで、テアニンがカテキンに変化するのを防ぐことができ、旨味をたっぷりと蓄えたお茶を作ることができるのです。
また、カテキンよりもさっぱりとした苦味のカフェインは、遮光することでその量が増えるため、被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、渋味・苦味が軽くなり甘みを感じやすくなります。
覆い香から生まれる芳潤な香り
被覆栽培を行うことによって、茶葉には「覆い香」と呼ばれる、海苔のような独特の香りが付加されます。
これは「ジメチルスルフィド」という香気成分が作られることで生まれる香りで、他の香気成分と混じり合い、お茶の爽やかな香りを作り出してくれるのです。
被覆栽培を行って作られた証拠とも言える「覆い香」は、高級茶の証とも言える香りなのです。
鮮やかで美しい水の色
被覆栽培は茶葉の色、ひいては水色も変化させます。
日光を遮ることで、茶葉はより少ない日光で光合成を行うために、茶葉中の葉緑素(クロロフィル)を増やします。
葉緑素は葉の色素なので、通常の茶葉と比べて緑色が濃くなり、鮮やかな濃緑の茶葉に育つのです。
また、少しでも日光を浴びる面積を広げるために、茶葉はより大きく、そして薄く育ちます。
通常の茶葉よりも薄く育った新芽は柔らかく、加工がしやすいため、ピンと針のように伸びた美しいお茶が作れることも、被覆栽培の目的の一つです。
被覆栽培のお茶は露天栽培のお茶に比べ、鮮やかな緑色の水の色になり、覆い香から生まれる芳潤な香り、そして濃厚な旨味を感じられる味わいが特徴です。